身代わり王子にご用心





純粋な痛みというよりも、まるで熱で生じた火傷に似た痛みだった。


「……か、カイ……」


助けを求めるように、彼の本当の名前を呼ぶ。伸ばした手は彼の大きな手に包まれ、そのまま胸に当てられた。


……どくん、と鳴ってる。


カイ王子の鼓動が私と同じくらいに速い、と知った。


入り込んだまま、彼は涙ぐむ私にキスをくれた。ゆっくりと頭を撫で髪を指ですいて。頬を撫でてくれる。


「……よく似合う。こちらの方が何倍もいい」


そう甘く囁いてくれるのが、くすぐったい。


痛みは次第に収まっていき、私が落ち着いたと見て取ったか。カイ王子がボソッと言う。


「……動くぞ」


ゆっくり、ゆっくりと。まるで労るように動き始める。優しさを感じる眼差しとしぐさに、痛みがほんの少しだけ軽くなった。


「カ……カイッ」


たまらず彼を呼べば、彼の胸が密着して唇を重ねられる。


うねりが、大きくなる。


全てをさらわれそうな激しさに、本能的な恐れを抱いて彼にしがみついた。


「桃花……っ」

「……ああ!」



身体のいちばん奥で、熱が爆発する。


「桃花……覚悟があるなら、私の子を……」


頭の芯から痺れた今は、彼が何を言ったか理解できない。


全てが終わった瞬間、私の意識は暗闇に落ちていった。