身代わり王子にご用心





彼が触れてない隙間がないほど思わせるほど、身体中にキスを降らせてきた。


全ての熱が、彼から与えられる。


私の感情全てが、彼に捕らえられて揺さぶられた。


堪らなくて私が彼の手を掴んだまま甘い声を漏らすと、彼の動きが止まる。


「た……かみや、さん?」


涙で滲む視界で捉える彼の表情は、わからない。


ただ、柔らかいキスだけが降ってきた。


「……今は、何もかも忘れろ」

「忘れる……?」


何を? とぼんやりした頭で考えると、彼は私の額に口づけた。


「オレの、本当の名前を呼べ」

「高宮さんの……?」


どういうこと? と訊こうとすれば、彼は耳元で囁いた。




「私の、本当の名前は――カイ·フォン·ツヴィリング……ヴァルヌス王国エルマー王子の遺児で、現第一王子だ」




高宮さんではなく本当のカイ王子は、私の鼻に口づけながら身体を限りなく密着させる。


そして、私の中へ入り込んできた。