身代わり王子にご用心






私が高宮さんの瞳に惹かれたのは、綺麗なだけじゃない。なんとなく見覚えがあるような色彩だったから。


(むかし……似たようなものを見たことがある? いつだったかな)


どうしてだろう?


その透明な光は、私の胸底をかすかに疼かせる。今まで固く動かなかった何かが、コトリと音を立てそうな怖さを感じて。胸元に手を当てながら、ワイングラスに目を向けた。


「え、えっと……わ、私……ワインは全然知らないんですけど」


「そう? それじゃあこれはどうかな。イースト·インディア·ペドロ·ヒメネス。甘口で飲みやすいシェリーだから、食後酒にはおすすめ」


シェリー? 外人さんの名前みたいな種類のお酒だわ。それと横文字が長すぎて、正式な名前は耳の右から左に流れていった。

だから、今まで敬語だったはずの桂木さんがタメ口になってたのも気づかずにいて。藤沢さんと一緒に試しに飲んで、思ったより飲みやすくて安心した。