美味しいワインとイタリアンを頂いて、気分がふわふわしてた。
決して私的なお喋りをしてた訳じゃないけど、高宮さんは私の仕事の話を辛抱強く聞いてくれた。
アルコールが入ると気が大きくなる酔っ払いの私。最後には大谷さんと過去の関わりをペラペラと喋ってしまってた。
「ね~ひどい話でしょう! 私は寂しそうな男の子に笑って欲しかっただけなのに、それ以来20年以上根に持って意地悪してきたんですから~」
「……」
高宮さんはなぜかだんまりで、ボトルワインをほとんどひとりで空けた。黙々と飲む彼に、私はひたすら話しかける。
「あの時……大谷さんに手を潰されて雪に埋もれかけましたから。よく生きてましたね~私。でも、誰が助けてくれたんでしょ~」
「――……だ」
ボソッ、と高宮さんが何事かを呟く。いい気分になってた私は、ワインのボトルを奪って手酌で注ごうとしたけど。高宮さんにグラスを奪われた。
「いい加減にしろ。それ以上飲むと記憶を無くすぞ」
「え~! いいじゃないですか。私もたまには酔いたいんです!」
「そうまで言うなら、別の方法で酔わせてやる。来い」
伝票を持った高宮さんがジャケットを抱え、空いた手で私の腕を取る。
はれ~? と私は頼りない足取りで着いていき、何とか財布を出そうともたついてるうちに支払いを済まされてしまった。
「わ、私もちゃんと払います~! 見くびらないでくらさい~!」
「うるさい、酔っ払い。少し黙ってろ」
大股で連れていかれた先は、タクシー乗り場で。そのままタクシーの後部座席に押し込まれた。彼が隣に座ると、タクシーは滑らかに発進してショッピングモールを抜けバイパスへ出た。



