……やられた!
そう思うしかなかった。
まさか、気の弱い浅井さんが大谷さんに使われたなんて。
「そこから動かないで! 今、事務所に連絡するから」
大谷さんはロッカールームの内線の受話器を取ると、唇の端を上げて嫌味を言うのを忘れない。
「今、事務所には警察署の方々が見えてるのよね。残念ねえ、前の窃盗は誤魔化せたのに。こんなにはっきりとした現行犯じゃあ、言い逃れなんて出来ないわよ」
クスクスと笑いながら、大谷さんは事務所へ連絡を取る。それから警察と事務所の人たちが来るまでが、やけに遅く感じた。
事務所からは2人のフロア長とチーフ、それから桂木さんの姿があった。
警察は大隅刑事と2人ばかりの警察官が。
私が開いた浅井さんのロッカーの前にいることは、確かに言い逃れ出来ない状況証拠だ。
当事者の私からでなく、大谷さんが事情を話す。
浅井さんが昨日帰宅してからロッカーの鍵を無くしたのを気付いた。けど、出勤時は遅刻ギリギリだったため、事務所や上司に言えず。休憩になってから事務所に行ったら親切な大谷さんの荷物の確認をしたら……というアドバイスを受け、一緒にロッカーに向かえば。私が勝手にロッカーを開けて荷物を漁っていた……と。
一方的な説明に腹立たしい思いをしたけど、大谷さんのひと言で更に頭に来た。
「浅井さんが確認したら、お財布がないって言ってました。水科さんのロッカーを確認してみてください」



