身代わり王子にご用心





カイ王子は今夜高宮さんの住むマンションに泊まる、といってた。


(私は……お邪魔だよね)


マンションには持ち主である桂木さんと、本物になりつつある恋人の藤沢さんが。そして、高宮さんと彼の想い人であるマリアさん。それからカイ王子がやって来る。


どう考えたって私は中には入る資格がない、お邪魔な人間だ。


別にいじけてひねくれてるわけじゃない。


そのメンバーの中で何の縁もゆかりもないのが私だけ、という事実を認めたに過ぎない。


もともと私は桂木さんの温情で一時的に住まわせてもらっている身分。カイ王子は桂木さんも知ってるふうだったし、久しぶりに会う旧友達の中で異質な私がいることが間違ってる。


(今晩はどこかのシティホテルかネットカフェにでも泊まろうか)


情けないことに、まだ私はこんな時に頼れる友達がいない。彼氏と同棲中の妹に頼るなんてもっての他だし。


(まだ……私は自分をしっかり持ってない)


新しい部屋を見つける前に、もっと自分を理解して何かを見つけないと。


これならば人に胸を張れる何かを……。


補充する食材を見ながら考えてると、ふと思いついたことがあった。


(どうせ一生独りなら、好きなことで一生ものの資格でも取ろうかな?)


高卒の私が取れる資格なんてたかが知れてるけど、調べてみる価値はあるかも。学校に行く必要があっても通学はムリだけど、通信教育ならあまり時間と費用がかからないだろうし。


(悲しんでるばかりじゃなくって、前を向かなきゃね……)


ゴシゴシ、と目尻を拭うと、張り切って品だしを終えた。