身代わり王子にご用心





「えっ……」


どういうことか訊ねようとしたら、カイ王子は近くにあった白いはんぺんを手にして驚いた声を上げる。


「ワオ! これも魚の肉で作った食べ物なの? ふわふわしてて面白い」

「はい。魚肉だけでなく繋ぎには山芋を使ったりするんですよ」

「ヤマイモ?」

「え~……と、じゃがいもの長いような芋ですけど。すりおろすと粘りがあって美味しい食材なんです。滋養強壮にもなるんですよ」

「へえ、それじゃあこの中には山のものと海のものが混ざって出来てるんだな」


カイ王子は自然な調子でそんなことをおっしゃるけど。そんな発想を私はしないから、不思議な人だと思う。


「そう……でしょうかね?」

「あれ、不思議な気分にならないかな? 本来なら出会うこともないもの同士が、違うルートを経てこうやって一緒にあるって言うのが。
たとえば、あのバナナやリンゴ。海外から来た果物と日本の果物が並ぶって、本当ならすごいことだと思わないかい?」


少し熱っぽく語る王子の輝いた瞳は、なんだか少年みたいだ。彼もこういう表情になる時もあるのかな? とちょっと想像しただけで、思わず突っ伏しそうになるほどのインパクトが……。


「人も同じだと思うんだよ、僕は」


カイ王子ははんぺんがお気に入りになったらしく、パッケージ越しにふわふわの感触を楽しんでる。こりゃ後でお買い上げかな、と苦笑を浮かべたであろう私に。カイ王子は更なる爆弾を落とす。


「今日は、マサユキのマンションに泊まるから。今晩またいろいろと話そう。マリアも含めてね」