その発言に驚いたのは、私だけじゃないはず。


今の今まで高宮さんは職場では極力人と関わらず、言葉のやり取りも必要最低限。ましてや自分から声を掛けたり発言したりなど皆無で。“大人しいより無口で何を考えてるかわからない”と思われてたはず。


そんな彼がよりによって二階フロアのボス的存在の大谷さんに、なんて。驚きを通り越して何が起きたか分からないという顔をした人もいた。 ムリもない。


「……な、何よ! それくらい誰でも知ってるわよ」

「へえ、社報でもどんな状況だったかは触れてもないのに?」

「そんなの、関係ないでしょ! だいたい何よ! あんたこそ当事者でもないのに、顔を突っ込まないでよね」


大谷さんは腰に手を当てると、威嚇するように高宮さんを睨み付けるけど。高宮さんは全く動じる様子がない。


「そう? 少なくともアンタよりは関わってると思うけど。あの時オレも倉庫の中にいたから」


ざわっ、とあちこちからざわめきが起きる。まさか被害者自らが名乗り出るなんて思ってもみなかったんだろう。


高宮さんはそんな告白をしながら、呑気にあくびをしてひと言を放つ。


「ま、オレのことはどうでもいいけどさ。やっちまったヤツは早めに名乗り出た方がいいんじゃないの? 既に被害届は正式に受理された。事件として警察が動き始めてる。 少なくとも傷害罪と器物破損、それから監禁罪だかに問われるだろうね」


高宮さんが後押しをしてくれた。そう感じた私は、今こそ言うべきだと思い切って口を開く。


「そ、そうです。あの時……閉じ込められたもう一人は私です。やった方は正直に申し出てください!今のうちなら被害届を取り下げる意思はありますから」