身代わり王子にご用心







「マサユキ! 久しぶり」


……あれれ?


カイ王子がパッと明るい笑顔をして、高宮さんに駆けつけましたが。


高宮さん自身はいつものボサボサ頭に分厚いだて眼鏡。ダサいの代名詞だったのに、そんな人が異国の王子と知り合いなんて誰が予想できたんだろう。


「……おまえ、来たのか」

「ああ、マサユキがどんな仕事をしてるか興味あってね。やっぱり玩具売り場担当なんだろ?」

「まあな……けど、面白いものなんて何もないぞ」


王子相手にボリボリと髪を掻きながら話す高宮さん……相当な強者だわ。侍従らしき人も慣れてるのか、殊更咎め立てはなかった。


「あはは、面白いかそうでないかは僕が決めるから。ぜひいつも通りに仕事をしてくれよ」


カイ王子はそうおっしゃると、なぜか再びこちらを見た。


「雑貨や食品もついでに見て行きたいなあ。可愛らしい女性に案内してもらえたらありがたいな」


そんな事を言うものだから、若い女の子達から黄色い声が上がるのは当然で。王子は見た目22~3くらいの適齢期。もしかすると玉の輿? シンデレラストーリーの主役に?と期待するのも無理はないけど。


(ま……アラサーの私には関係ない話だし)


もともと地味な私が最近は頑張ってるけど、それでもやっと人並みになるかならないか、ってレベルだし。それにこの年になると、自分に相応なものが判ってくる。20代はじめのように、若さに任せた分不相応な希望は持てない。


身の丈に合ったささやかな希望で満足しなきゃいけない現実が、いやと言うほど解るから。

だから、私は関係ないとすぐに目を逸らした。