「最初にここのボタンを押してください。それからメインメニュー3番の在庫管理メニューに進んで、それからこの7番の在庫チェックを押せばこの画面が出ますから」
「ふむふむ、なるほど~」
坂上さんはペンと小さなノートで真剣にメモを取ってる。こういうのはあたりまえかもしれないけど、人によってはメモすら取らないからな。
新人研修の時に上司から注意を受けていた誰かさんを思い出すと、その誰かさんは玩具売り場のカウンターでまだあのゲーム機の修理を続けてた。
それを見た大谷フロア長がキレて注意をするけど、彼はどこ吹く風で修理を続けてる。さすがフリーダムなお方。
「高宮くんも面白いわね~あんまり話してくれないけど、いざという時には一番頼りになるのよ。それはそうと、もうすぐバレンタインだったわよね。 催事場や食品売り場が一番大変だけど、こっちもプレゼント用で忙しくなるんでしょ?」
「まあ、そうですね」
バレンタインか……。
今までは妹と自分のために手作りしていたくらいだけど、今年はどうしよう?
(友チョコで藤沢さんはあげるとして……後は職場のみんなにトリュフでも配ろうかな)
桜花はS市で暮らしてるから渡すのにわざわざ足を運ぶのもなんだし。健太朗くんとラブラブなバレンタインを過ごす中で、お邪魔はできないな。
あとは……
私はチラッと高宮さんを横目で見てすぐに目を逸らす。ドキンドキンと鳴る胸を押さえた。
(嫌われてても……義理なら受け取ってくれるかな?)
桂木さんと一緒に、なら不自然じゃないかも。義理という点を強調するために、小ぶりなラッピングで。
後で捨てられたとしてもいい。ダメもとでチャレンジしてみよう、と密かに決意を固めた。



