身代わり王子にご用心





そして、極めつけはシステムキッチン。

IH式のクッキングヒーターが三つ口あって、専門店並みの排煙設備にビルトイン式の食器洗浄乾燥機まであった。


これを見たのは、夕食作りのお手伝いしようとキッチンに入ったからだけど。


「不要だ」


ヘルプの申し出は、高宮さんにすっぱりバッサリ、断られてしまった。


彼は手慣れた様子で野菜を洗い材料の下ごしらえをしてる。とてもスピーディーで無駄がなく、確かに手慣れてるという感じがする。


じろり、と睨まれて初めて知った。高宮さんの瞳は日本人によくあるブラウンじゃなく、なんとなくグレーがかっているって。


普段から飄々として掴み所がない彼だけど、こんなに迫力がある人なんて気付かなかった。大抵の人ならその視線の鋭さに怯むだろうけど。私は躊躇いながらも、なおも食い下がった。


「で、でも。ただご馳走になるのは申し訳ありませんから、食器を並べたりするくらいはさせてください」