「お、この卵美味しい」
「それ、わたしが焼いたんだよ~」
「へえ、未来もずいぶん料理の腕が上がったんだね。食事が楽しみになるな」
「え~そう?でも、ご飯の用意くらい当番制にしないと。桃花さんが大変だよ!」
ダイニングテーブルでは桂木さんと藤沢さんが仲良く会話をしていて、もうひとつ……私の向かい側の席はポツンと空いたまま。
やっぱり、高宮さんにとって私は軽蔑するだけの存在なのかな……。
涙を堪えながら何とかご飯を掻き込んだ。
マンションから出ると、空に鈍色の雲が広がってた。
吹く風は耳が痛くなるほどの冷たさで、マフラーを顎の下まで巻いて顔を埋める。
はぁ、とため息をつくと、白い霞は風に溶けてすぐ消えてゆく。
……私の存在も、他人にすればこんなものなのかもしれない。
空を見上げれば、重く垂れ込めた雲から今にも雨か雪が落ちそう。
(子どものころは、雪が降ると大はしゃぎしたっけ)
近所の同じ小学生の子達と、雪合戦をしたり雪だるまを作ったり。かまくら作りに挑戦した時もあった。
雪は手袋越しに体を冷やしたけど、体をたくさん動かしていれば全然気にならなかったな。
……だけど。
いつからか、私は雪が怖くなったんだ。
いつから?
そう考えていた私は、ふと足を止めた。
道路に沿って建った商店街の建物の中で、フラワーショップのディスプレイされたお花を見て、何かを思い出しそうだった。
灰色……その中でみた綺麗な宝石。他が色鮮やかなのに、それだけがとても印象に残ってた。



