きっと、徹夜で修理をしていたんだろう。どこのお店に持って行っても断られて、最後に彼のところへたどり着いたに違いない。
思えば……彼は……高宮さんはそういう人だった。
無愛想で鈍く見せてるけど、玩具売り場で見せる穏やかな、優しい笑み。子ども達と話す時は素の自分に戻っているのか、幾分乱暴な言葉遣いをするけれど。子どもたちは彼を慕ってやって来るんだ。
彼が善意で行なっている玩具の修理は、ハッキリ言えば彼の独断的な行動だ。何度もフロア長から注意を受けてるけれど、止める気配はない。
そりゃそうだ。新しい玩具を買ってもらうのがお店にとって一番だ。売り上げに直接繋がるどころか、売り上げそのものを邪魔する彼の行動は。数字から見れば何の生産性もない。
だけど、と私はしゃがんでゲーム機を眺める。
親子のプリクラが貼られたゲーム機。名前シールもあって、たぶん小学生の所有物だろうけど。傷だらけプラスチックの表面を見るだけで、どれだけそのゲーム機とともに過ごしてきたかが解る。
きっと、手放せないんだろう。
たかがゲーム機。他人にとってはゴミとなる物も、ともに過ごしてきた人にはかけがえのない宝物にもなる。
思い出という大切な、何も代わりができない価値で。
きっと高宮さんは、それが解っているから。修理を断らないんだ。
(まだ、寝かせてあげよう……)
忍び足でそっと出ていこうとした途端、急に高宮さんの声が聞こえてドキンと心臓が跳ねた。



