会場の熱気とアルコールの作用で頬が熱くなってたから、外の新鮮な空気はありがたかったけれど。それを堪能する暇などなかった。
「……桂木だけでは足りないというわけか?」
「え?」
彼の――高宮さんの言う意味が、わからない。何を訊きたいの?
彼は乱暴に私の手を離すと、肩越しにこちらを見る。
その目にはどうしてか、軽蔑に似た感情が浮かんでた。
「桂木が駄目になったから、富夫や勝に乗り換えるつもりか?」
「……!」
あまりにも酷い言いぐさに、一瞬呼吸すら忘れそうになった。
「ち、違います! 私は最初から……桂木さんは」
「惚けるなら勝手にしろ。だが、あいにくあの通り桂木ははなからアンタなんて相手にしていない。望みなど持つだけムダだ」
高宮さんの辛辣な言葉が、グサグサと私の胸に突き刺さる。
けれど……
何よりも痛かったのは、大好きな人に酷い誤解を受けていることだった。
「違います……違う! わ、私は……桂木さんをす、好きなわけじゃないのに……」
我慢しきれなくて、遂に涙がこぼれ落ちてしまった。
私は両手で顔を覆いながら、なんとか必死に言葉を紡ぐ。
「富夫さんや……勝さんだって……わ、私はそんなつもりなんてこれっぽっちもないのに……」