仕事に出るときはわざわざブラウン系統のカラーコンタクトをした上、分厚いだて眼鏡で目を隠す彼。
あんな綺麗なブルーグレイの瞳を隠すのはもったいない、と思うけど。逆に見られなくていい……なんて矛盾したおかしな気持ちになる。
あの綺麗な瞳を独り占めしたい、だなんて。私もどうかしてる。
(きっと、そんなことはどんな奇跡が起こったってあり得ないのに……ね)
雑誌で見た金髪碧眼の美女、マリアさん。
かつて日本に留学していて、日本語も英語もドイツ語も堪能な才女。もと伯爵という貴族の家系(オーストリアで貴族制は廃止された)で、 モデル以上の美人なのにお料理が得意で、どんな人にも気後れせず話しかけるフレンドリーさもある。
……何もかも敵わない。
いいえ、勝つとか負けるとか違う次元にいる人だ。比べることさえおこがましい。
写真では本当に、綺麗なひとだった。



