身代わり王子にご用心




囲炉裏の向かい側を見れば、やっぱり桂木さんがこちらを見て笑ってる。


恥ずかしさから顔に熱が集まって、絶対耳まで真っ赤になってる。


「ご、ごめんなさい……こんな私で」


気の利く女性ならお料理をダシに、いろいろと話をして退屈させないだろうに。

そんな程度の気遣いすらできない自分に心底嫌気が差した。


(これだから私は友達一人できないんだ……)


どんなに着飾っても、変える気がないなら結果は同じ。
私のためを思ってこうしてよくしてくれる桂木さんにすら、最低限の気遣いができないなんて。


……最悪、じゃない。


もう、食事なんて図々しい気分になれない。箸を置いた私は、正座の膝の上に手を置いて俯いた。


駄目だ……涙がこぼれそう。


必死になって泣くな、と言い聞かせていると。桂木さんから静かなひと言が出された。


「なぜ、あなたはそうも他人に遠慮し過ぎるのですか?」