「それは困ります。水科さんとの昼食はもう予約してありますから」
やっと我に返ったらしい桂木さんが、富士美さんに言外に諦めるようにと促す。
「へえ? あなた、気に入らなかったんじゃなくて? 桃花ちゃんの変身」
「いいえ。ただ、ほんの少し驚いただけです。やはり水科さんは、赤がよく似合いますね」
桂木さんの見事な切り返しに機嫌を良くした富士美さんは、そうでしょ? とあからさまに上機嫌になった。
「黒には赤が合うのよね。ミステリアスに見えるし、情熱的でもあるでしょう。
割と背丈もあるし、スタイルもいい方だから。多少身体にフィットするノースリーブノーカラーの赤いワンピースね。
冬だから鮮やかな赤でなくて、少し落ち着いたカラーで。縁には黒のラインを入れて引き締め効果も狙ったの。
髪はふんわりエアリーなワンカールボブ。彼女のチャーミングな瞳が映えるように、メイクは目力を強調してみたの~」
足には黒い柄入りストッキングと、焦げ茶色のブーティ。それと同色系のショートダッフルコートを持たされた。



