身代わり王子にご用心




「えっ……と、あの」


いつの間にかヘアサロンの椅子に座らされた上に専門のスタッフに取り囲まれた私は、恥ずかしいながら富士美さんに懐事情を話した。


「あ、あの……スキンケアを覚えたい気持ちは……あります。でも……そのう……あまり持ち合わせがないので……き、今日は遠慮していいでしょうか?」


恥ずかしすぎてうつむき気味に話すと、いきなり富士美さんにクイッと顎をしゃくられましたよ。


えっ!?


「うつむいちゃダメよ! 上を向いて、までは言わないけど。まっすぐ前を向いて。話すときも歩くときも。それだけであなたは変われるのよ」

「は……あ」


力説されてもよく意味が解らなくて鏡を見ながら目を瞬いていると、富士美さんがフフッと微笑む。


「そうそう、鏡は自分の現実を映す魔法のアイテム。まっすぐに見て、今の自分をよく見るの……どう?」