「こちらのお店は何も婦人服だけじゃないの。トータルビューティー……“女性の生まれたての美しさを引き出す”をモットーにしてるの。女性なら誰でも磨けば綺麗になれる、宝石の原石ってわたくしは考えてるの」
驚愕したままの私の腕を、富士美さんはがっしりと掴む。す……すごい力。とてもほどけませんよ。
「だから、ね。あなたみたいに“手抜き”してる女性(ひと)を見るとたまんないわ。理由はいろいろとあるだろうから訊かないけど、最低限のお手入れや自分に合ったメイクや髪型を覚えても損はないと思うのよ。違う?」
富士美さんにされた指摘はもっともで、私は項垂れるしかない。手抜きと揶揄されても仕方ない薄化粧に、伸ばしっぱなしでひとつに纏めただけの黒い髪の毛。そりゃあ疲れたおばちゃんに見えても仕方ないダサさだ。
「落ち込まないの~。このお店にはヘアサロンもあるし、メイクアップアーティストも常駐してるから。まずはご自分に合うものを、楽しみながら見つけましょ」
富士美さんはパッチリとウインクをして、悪戯っぽく笑う。
「女性はね、それだけで美しい存在なの。でも、それを磨いて楽しめるのは女性だけの特権なんだから。その楽しみを放棄するなんてもったいない!
メイクや装い次第で色んな自分を見つけられるのも、女性ならではなのよ。
いつもと違うあなたに変身して、暁ちゃんを驚かせちゃいましょう♪」



