身代わり王子にご用心






「もし、桂木さんがこちらのお店で何かを作られるんでしたら、それにはお付き合いしますね」


駅まで歩いて電車で帰ることも考えたけど、桂木さんがせっかく連れてきて下さった気持ちを全て無駄にはしたくない。


「こんなに素敵なお店、なかなか入れないんで。連れてきてくださってありがとうございます。庶民には体験できないセレブな気分をちょっとだけ味わえました」


そう、社会勉強のつもりで見学させてもらおう。何事も経験、経験。滅多にない機会なのだし……と、私はフロア全体を眺めたり。ディスプレイされたコーディネートを熱心に見た。


「オホホホ。暁(あかつき)ちゃん、また変わった娘(こ)を連れてきたわねえ」


ややかすれ気味ながらも、魅力あるハスキーボイスが耳をくすぐる。振りかえれば、身体にフィットした白地に紅いバラのワンピースに、黒いボレロを羽織った美女。ずいぶん背が高いけど、ラメ入りのタイツに包まれた足の脚線美がすごかった。