身代わり王子にご用心





いえいえ、明らかに変でしょう。


まず、お店の外観が石造りのモダンな建物というのはいい。内側も広々としたスペースに、アイボリーを基調とした壁紙と天井。床は白い大理石ふうで、センスを感じる服やアクセサリーの展示をしているのも、まあ構わないんですけど。


入店した途端、黒をベースにした制服を着た綺麗な女性店員さんに一斉に取り囲まれるのはなぜですか?


しかもフィッティングルームに強制連行され、メジャーのみならず専用の計測器で身体のあちこちを計られたり。色んな色や布地の見本を持って来て合わせられたり。更には計測以外を桂木さんがにこやかに見守っているのは? しかも椅子で紅茶を飲みながら。


「あの~~私、“ハナエ·フジミ”の服なんて、とても買えませんし。第一着る機会もないんですが」

「大丈夫、来週には着れるから」


桂木さんは意味不明なことをおっしゃいますが……


「いいえ、私には分不相応です。私レベルはバーゲン品で十分ですから」


これだけは譲れなくって、桂木さんに言い募る。


「人にはそれぞれ相応しい物というものがあります。あなたなら何でもないことでしょうけど、私には過ぎた品物ですから」