身代わり王子にご用心




リムジンが30分掛けて到着した先は、県庁所在地の某都市。その中でも一番の賑わいを見せるS区。


仮にも日本三大都市と言われる大きな市の中でも屈指の大きな街で、とあるブランドの店舗の内部へエスコートされました……が!?



「えっと……!?」


今、この状況は私にとってあり得ない。目の前にいる人も、サンプルの服も、周りの光景も。

それなのに、隣にいる人はにっこりと笑ってこうのたまいました。


「ああ、やっぱり。あなたにはその色が合うと思いました。女性としての魅力が増すのですから、もっと華やかに装うべきですよ」


うっとりするような甘い笑みを炸裂させて下さるのは、目の保養になって喜ばしいのですが……。


「あ……あの~……今日は桂木さんのスーツを注文しに来たんじゃないんですか?」


何人もの店員に囲まれた私が恐る恐る訊ねると、桂木さんは微笑んだまま答えられました。


「いいえ、僕はひと言もそんなことは言ってませんが?」

「ですよね……だけど、これっておかしくないですか?」

「どこがでしょう?」