ぷしゅっといい音をさせてファンタオレンジを一気飲みした架月ちゃんは、俺らに向き直ってお辞儀をした。





架「ありがとうございました。あと少しで脱水起こして死ぬところでした」




悠「いや普通に元気だったじゃん」




黎「てゆーか床に這いつくばって何やってたの?」




架「10円玉落ちてないかなーって探してました」





落ちてる確率の方が少ないと思うけど。



つか金足りないなら教室まで取りに行けよ。





なんでそのジュース分の金しか持ってこないんだ。もしもの時用に財布持ってこいよ。





突っ込みどころはたくさんあるけど黙っておこう。こっちが疲れる。





黎「夏閃もジュース買いに来たんだろ?」




夏「あぁそうだっけ。...もういいや」




架「そうだったんですか!?是非奢らせて下さい!」





そう言って慌ててポケットから財布を出した架月ちゃ.........え?



『ポケットから財布を出した』...?





「待て待て待て待て」




架「そんなに言われなくても待ちますよ」




「財布もってんじゃん」





俺の指摘に彼女は自分の手元をみた。





架月ちゃんの静止画を数秒目にした。





ロボットのようなぎこちない動きで首を持ち上げた架月ちゃんは、


気まずそうに口の端を持ち上げて笑っていた。





架「あ...あっレぇーオッカしいナー。...!!これはまさか“架月ズ・MAGIC”!?」




黎「誤魔化しが無茶苦茶過ぎる...!」




悠「ゴメン俺頭痛がしてきた。保健室行ってくる」




「逃げんな」





額を押さえてソロソロ後退りをする悠の腕を捕まえ逃げられないようにすると、


「嫌だー離してー」と体をくねらせながら叫んでいた。





それよりもこんな状況でまだ何か考え込んでる沙絃は何なんだ!その集中力勉強に使え!





架「...皆さんに奢らせて下さい」




悠「遠慮しときます」




架「ひど!」




黎「ねー予鈴鳴ってない?」




沙「俺ずっと考えてたけどさ」





やっと口を開いた沙絃は珍しく真剣な目をしていた。





ろくでもないことだとわかっていながら静かに話を聞いてあげる。