「おーい、架月ちゃん」
声だけ飛ばしてみたが、起きる訳もなく。
仕方なく肩を少し揺らしてもう一度名前を呼んだ。
それでも架月ちゃんは起きることなく。
架「ん~...」
モゾモゾと体を動かしただけで、目を開けることはなかった。
口がほんの少し開いていて、
その色っぽさに俺の中の何かが徐々に崩れていくのが手に取るようにわかった。
我慢だ我慢。
そう言い聞かせてた時、架月ちゃんの肩においていた俺の手に、
架月ちゃんの小さな手が重なった。
もしかして起きたのかと思い顔を覗き込むと、
彼女は嬉しそうに微笑んでいた。
その笑みに抑制していたものが完全に壊れた。
「そんな顔してたら、誰だって襲うぞ...っ」
言い訳のように呟いた言葉。
上にあった架月ちゃんの手を握り締め、
覆い被さるように上半身を持ち上げた。
真下にある架月ちゃんの整った寝顔に目を細めた。
鼻と鼻が触れ合わないギリギリのところまで近づくと彼女の寝息が頬を掠め、
それがどうしようもなく心拍数を速めた。
ここが悠の家で、いつ誰が来てもおかしくない状況だった。
窓の外はいように静かで、
すぐ目の前にいる架月ちゃんと俺の息遣いしか聞こえない。
周りが見えなくなるというのはこのことを言うのだろうかとぼんやりと思う。
