「口開けて」


キスをしながら言われると

もう、何もかもが
どうでもよくなってしまう。

されるがまま、ただ
唇を重ね、舌を絡ませ

息継ぎすらできないまま
私は、総一の首に手を回している。




「・・・お前ら、何してんの?」



その声に、大きく体が跳ね上がり
とっさに総一と体を離し
声の方向へ一斉に顔を向けた。



「真弓ちゃん、総一とは
何もないんじゃなかったわけ?」


いつもの雰囲気とは全然違い

低い声で無表情のリオンくんが立っている。



「総一、何で真弓ちゃんに
手出してんの?
俺に手出すなって言ったの
そういう仲だから?
意味わかんねぇんだけど?
ってか、お前の彼女って誰?」



気まずい表情のまま
総一は、小さくため息をつくと



「まひろと付き合ってるけど・・」


「あそ、悪いけど
二股相手に真弓ちゃんはもったいねぇから
俺、連れて帰る事にするわ。
別に真弓ちゃんと付き合ってるわけじゃねぇんだろ?」



「・・・あぁ」



「真弓ちゃん、帰ろ」


そう言いながら手を差し伸べている。


「でも・・・」


思わず、総一の方を見るけれど

もう、目を合わせてくれなかった。


そう、きっと・・・


それが答えなんだと・・・


「迷惑かけてごめんね・・・」


精一杯の強がりで
総一にそう言うと
リオンくんと共に
総一との家を後にした。