乱気流が発生し、少し揺れがあるかもしれないと機内アナウンスが入り、シートベルト着用ランプがついた。
隣の席でブランケットをすっぽりかぶり、熟睡するレイにベルトをつけてやろうと、身を乗り出す。
ブランケットをどかし、ベルトをのばすと。
その時に少し、レイの細い腰に手が触れた。
その途端、寝言だろうか…少し色っぽい声が漏れた。
「あ…ん、だ……め……んっ…。」
ファーストクラスで、少し他とシートが離れていて、レイの声はくぐもっていたから聞こえてはいないだろうが、寝言ととはいえこんな声を聞かされてはたまらない。
俺は、下腹部に力を入れた。
日本に着くまで、あと6時間。
多分、空港についたら凄い取材陣の数だろうから、記者会見を予定している。
はあ。
自宅に帰って、レイと早く2人っきりになりたい・・・。
結局、フランス映画祭の授賞式後、日本でも凄い騒ぎとなり事務所から帰国命令が出た。
てゆうか。
俺たち、授賞式の後、新婚旅行だったんだけど・・・。
木村さんから帰国命令を聞いた時俺は愕然としたのに、レイはあっさり受け入れていた・・・。
俺がそのことをなじったら、状況が変わったんだからしかたがない、と淡白な答え。
はあ。
仕方がないのはわかっているけど。
だけど、一生に一度の新婚旅行なのに…。
レイの腰にシートベルトをはめ、ブランケットをかけてやる。
眠っている顔は、いつもの大人っぽい女性の顔ではなくて、少しあどけない。
俺は、この顔が好きだ。
レイの髪をサラリ、と撫でて、ため息をついた。
はあ。
早く2人っきりになりたい…。
と、その時。
またレイが、寝言を言った。
「・・・ふふ…だ、め………ん……ケイ……ふふっ……。」
「!!!」
何だと!?
ケイ!?
誰だ、それっっ!?
俺は、全身から血が引いたような状態となった。
俺は慌てて、レイを揺さぶった。
疲れているから、寝かせてくれと言われていたが、そんなこと今言っている場合じゃない!!
レイが、浮気?
ま、まさか!?
だけど、『ケイ』って言っていたよな?
俺は無理やりレイを起こした――――
案の定、レイは物凄く不機嫌で。
そして、次の言葉に俺は自分の失敗を知った。
「何?…寝かせてっていったよね?しかも、弁慶と遊んでる夢見てたのに…それを遮ってまで、私を起こすって、相当な理由があるんだよね?」
も、もしかして…。
『ケイ』って、『弁慶』の聞き間違いか?
「・・・・・・・・。」
俺はとりあえず、CAにビールを注文した…。
ビール、といえば…レイのウィリスへの仕返しは、信じられないものだった…。

