唇が触れた途端、俺はレイの後頭部を左手で固定し、右手で腰を抱き寄せた。
いわゆる速攻ってやつで。
レイがびくりとして、抵抗しようとしたけれど。
濃厚なキスをしかけたら、体の力が抜けて俺の胸に持たれてきた。
ふふ、感じてる。
そう思うと愛おしさがひとしおになり、キスにも熱が入る。
ああ、もう、このまま部屋に戻りたいなー。
そんな考えても無理なことが頭に浮かび、腹筋に力を入れた。
まだまだ一日は長い…。
レイの唇と舌を存分に堪能して、レイの腰が砕けそうになったところで、腰を支えながら唇をようやく離した。
トロンとした、色っぽいレイの表情にまた理性がぐらついた。
だけど。
その時。
妙な、歓声で2人の世界から現実に引き戻された。
え?
え?
何だ?
気がつくと俺たちの周りには、凄い人だかりができていた。
って、テレビカメラも回ってるし…。
フラッシュも凄い数たかれている。
冷やかしのような歓声の中、フランス語で話しかけられ、マイクが向けられた。
「え?…レイ、なんて聞かれてるんだ?」
わからなくて、レイに聞くが、レイは真赤な顔をして下を向いてしまい答えない。
つまり、滅茶苦茶恥ずかしがっているってことだけど。
ここは、通訳してもらわないと、ダメだろ。
「レイ。ほら、通訳!」
再び急かすけれど、ダメだ…固まって動かない。
困っていると、後方から日本語が聞こえた。
「今のキスは、フランス人も負けそうなくらいとても情熱的だったけど、宣伝のためですか?それとも……「夫婦の、愛情確認です!」
日本語で話しかけてきたのは、さっきのレイの頬にキスをした、フランス人野郎だった。
聞けば、レイの中学の同級生で。
レイにフランス語を教えたやつだと言う。
今は、フランスの新聞社に勤めていて、取材でやってきていたという。
そいつが、他のフランス人に俺の言葉を通訳した。
その途端、また冷やかしの歓声が上がった。
調子にのった俺は、フランス人野郎の登場と、レイに見とれれいる輩に威嚇の意味として、レイの唇にもう一度、ちゅっ、とキスをしてみた。
またまた盛り上がる周囲。
そう言えば、俺のノミネートされている映画の題名って、『20年目のキス』って題名だったな…。