『伊藤チャン、背中のチャック空いてるよ。』 『えっあっ、えと、ありがとございます…』 電話の向こう側で聞こえてきた男の声。 チャック空いてるよ、だと? ーーどこに、いんだよ。 ーーーそいつ、誰だよ。 「お前、今どこにいんの?」 想像以上に低い声がでて、電話先の菜々子が固まったのが伝わる。 お前のことならわかってるつもりだった。 けど今はよく、わかんねぇ。