金髪の少年少女。

「…おお、カイトにエレナか。元気だぞ」

私はクスッと笑った。

…この城下町の散策をするようになって知り合った幼い兄妹。

生意気そうな男の子の方がカイト。

いつもカイトに隠れておずおずと私を覗き込むのが妹のエレナだ。

二人はこの通りの入り口近くにある、大衆食堂『梟亭』の主人の子供達。

この国の子供達のリーダー格であるカイトは、私が街を散策するようになるとすぐに声をかけてきた。

曰く、「おまえなかなかつよそうだな。けらいにしてやってもいいぞ」

どうやら彼の世界の中では、私は『強そうな年上のお姉さん』程度の存在らしい。

どことなく紅に似たものを感じ、私は二つ返事で彼の家来にしてもらう事にした。

…カイト達が、私がこの国の女王という事を知ったのは程なくしてから。

しかし、カイトの態度は変わらない。

「ふーん、じょおうか。じゃあおれのつぎにえらいんだな」

この生意気さが何とも可愛らしい。

逆にエレナの方は、女王としての私に興味津々だった。

「おとめねえねは、じょおうなの?」

「ああ、昔は姫だったのだがな」

私がそう答えると、エレナは、ぱぁっと表情を輝かせた。

「なんでおひめさまじゃなくなったの?もったいない!」

どうやらエレナの中では、姫君の方が格が上らしい。

ともかくこの二人と知り合ってから、街の散策の楽しみがまたひとつ増えていた。