「テメーかよ！
ちゃんと前見ろアブねーなぁ」


「そっちがイキナリ来たんじゃない！」


「ウルセーよバァカ！」


「なによ！ボケ！！」


「俺はまだボケてねーぞ！！」


てんやわんやのわたし達の会話
傍から見るとどんな風に思われているのだろうか


まぁそれはどうであれ
何となくこの痴話喧嘩(？)を楽しんでる自分
もいたような....気がする。


「ボケてるもんね！ボケボケボケ！
ボケだしアホ！」

「アホはてめーだ！！」

「てめーっていう呼び方やめてくれないかなぁ！私雪乃だし！」

「なんだよ？オマエ！
まさか雪乃て呼んでほしーんか？」

「馬鹿じゃない？あんたに何で
下の名前で呼ばれなきゃいけないの！
この勘違い男！！」

「あー！？」


彪牙はそういうと
私のホッペを両手でギューっと
つまんできた

「いひゃい！」(痛い！)

「あ〜や〜ま〜れ〜」

「ぜっひゃい、いあ！」(絶対、嫌！)

何だかんだ
ちょっと笑いながらのこのやり取りは
やはり周りからは『喧嘩するほど仲がいい』と
そんな風に思われているに違いないと
私は思った。

そしてそんなわたし達を
誰が何処で見ていたなんて
私も、もちろん彪牙も気にしてなくて


そう....深くまで考えてなかったから。

考えが浅かった
ほんとうに


もう少し用心していれば


あんなことにならなかったんじゃないかと
思うと

この時のこのやり取りを
過去から消し去りたいと強く願う....




「....ラッキー....」



誰かわからないつぶやき声が
聞こえた....気がした。