❁❁匠side❁❁


亮太は彪牙の女嫌いがなかったら
こんな事態にはなっていなかったと言ったけど

俺は思ったんだ。


彪牙が女嫌いじゃなかったら
マネは次々と辞めてなかったし
そしたら当然雪乃とも出会えてない。


彪牙の女嫌いのおかげなのかな
と俺はコッソリ笑った。


「どうしたの?楽しそうだね!」


帰り道。
月のあかりに照らされた雪乃の
笑顔は不意打ちで胸が高鳴ってしまったほど
綺麗で美しかった。

「いや、ちょっとね。」

「え〜!教えてくれたっていいのに。
気になるんだよね〜っこういうのっ」

そう彼女は悪戯っぽく笑う。



雪乃の表情はまるで百面相。
ころころ変わる表情に
気づいたら目を奪われてる。
当の本人は全くと言っていいほど
気付いてないのが惜しいなと思う。



「あ、エロいこと考えてたんやろ?
だから言えへんのやな!
スケベや!スケベ!」

馬鹿なことを言い出した皐に
ゲンコツをくらわせた。

ゴチっと夜空に響く鈍い音。
殴られた後、皐は“あんまりや”と言ったけど
俺が言いたい。


雪乃に変な勘違いされたら
溜まったもんじゃない。


「大丈夫?....石川皐....くん。」


まだ呼び名が決まってないんだろうか。

というか彼女は人見知りなのか解らないが
知り合って間もない人の名前をフルネームで呼ぶ。
大体の女性はあだ名や呼び捨て
相手の有無を聞かすにパッパッと
決めていってしまう。

だが、彼女は違う。

そういうところも彼女の魅力なんだろうな


「皐でええよ?あ、あだ名でもOKやで
可愛いあだ名つけてな♡」


男の癖に(まぁ、わざとだろうが)
雪乃に向かって上目遣いをする皐に
俺は何となく嫌だった....とは言わないけど。