イケメン男バス×天然女〜なんで私がマネージャー!?〜

❁❁恭也side❁❁

「雪乃」

声には出さなかった。
だけどそう“言った”

雪乃の顔が
捨てられた子犬のように
瞳が潤んでたせいでもあるだろう
ついとっさにそう言ってしまった。

俺と目が合ったとき
分かり易い愛想笑いに
胸を打たれたようなそんな感覚。

その愛想笑いは何だか
綺麗に美しく感じた。

俺は女をあまり
そういう風に思ったことがなくて
初めての感情に自分でも驚いた。

雪乃と言ったあと
俺は本当は何を言いたかったのだろう。

雪乃が何?と言ったから
皆がこっちを注目してしまい
それどころじゃなかった。

我が自分でさえも
何故名前を呼んだのか。
なんと言いたかったのか。
愛想笑いを美しくに思えたのは何故なのか。

何も整理がついていない状態で
なんと言葉を並べればいいのか
わからなかった。

だから俺は
なに食わぬ顔で
いつものポーカーフェイスで
場を進めた。

ただ単にそれだけのこと。




でも、まぁ、
わかるのは。


俺はあの時、
雪乃を助けたかったんじゃねぇかな
と今よく考えたらそうなんだろうなって
思う。


今日会ったばかり。
なのに何でこんな
会ったばかりなのに。

この人(雪乃)には人を吸いつけるような
そんな....神秘的なものを漂わせているに違いない。
俺はそう思った。





それを証拠に
ほら、皆。



君に瞳を奪われてる。



皆、まだ。
無意識。


これを意識してしまえば
争いになるのは
感の鋭い俺だ。

目に見えてるってなもんだ。




もしかしたら
俺もその争いの“一員”になってしまうのも
時間の問題なのかもしれないと
そう考えると

無意識のままで。

とそう願わずにはいられなかった。



誰も自分を
わからなくていい。



その願いは叶うことを
知っていようが知らなかろうが

時間は時一刻と過ぎていった。