15の時に老人と出会い、気乗りしないでやってみた10円玉占い。
その際に硬貨をなくしてしまったことが、波乱の人生の幕開けだった。

でも俺はもう10円玉をなくしたりはしない。
なぜならその10円玉は、俺のポケットの中にしっかり入っているからだ。


俺はこの10円玉を死ぬまで肌身放さず持っているつもりだ。



厨房に立つ竜太郎と源太郎の姿を見て、幸子は大粒の涙を流す。
夫が30年ぶりに家に帰って来てから、初めて流す涙であった。

幸せに満ちた笠松家。
竜太郎の新しいパートナーも、間もなく現れることだろう。




<完>