帰ろうと思った竜太郎は、ベンチから腰を浮かしかける。

そのとき、遠くの方からこの公園に向かって歩いて来る人影が見えた。
まだよく見えないが、シルエットからすると女性ではない。
男性、しかも若者ではなさそうだ。

せの人影はどんどんとこちらの方に近づいて来る。
竜太郎の胸が高鳴った。

今朝声を久しぶりに聞いたが、老人と顔を合わせるのは実に31年ぶりだ。
竜太郎はやや緊張しながらも、歓迎モードで待ち構えていた。