――トントン
「はい。どうぞ・・・」
音楽室の中にいるのは誰かと聞くと、優雅は「新井先生一人です」と言った。
優雅は、何度も振り向きながら、音楽室から離れて行った。
「よぉ、元気?」
ドアにもたれたまま、俺はピアノの前にいる佐知子に声をかけた。
久しぶりだとは思ったが、2年以上も会っていなかったとは思えなかった。
俺は、顔を見ると・・・懐かしくて、愛しくて、抱きしめたくなってしまうのではないかと思っていた。
でも、そんな感情は一切なかった。
陽菜とは1週間会えないだけでイライラするのに。
「晴斗・・・?どうしてここに。」
俺だとは思っていなかったようで、佐知子は急に表情を変えた。
カーテンを閉めたままの音楽室は、薄暗く、湿った匂いがした。
「けじめつけにきた・・・」
俺に走り寄ろうとする佐知子から、目をそらした。

