王子はどこまでも王子だった。
でも、そういう王子がとても好きだ。
緊張した唇の力が抜ける。
運転席に座り直した王子は、わざとらしく咳払いをしてから言った。
「陽菜、今から俺のモンな!」
「は、はい。晴斗さんだけのモノです!!」
王子のモノ。
やっと王子と気持ちが通じ合った。
涙が出るほど嬉しいのに、なぜか涙が出ない。
でも、ニヤニヤした顔が元に戻らない。
「お前、オムライス好きだったな?めちゃめちゃ腹が減ってる時のオムライスと、少しだけ腹が減ってる時のオムライス、どっちがうまい?」
王子は、車をゆっくりと走らせた。
「お腹がめちゃめちゃ減ってる時です。」
私は普通に答えた。
「そういうこと。だから、俺はお前にまだキスしない!!わかったか?」
わかるようなわからないようは表情の私を見て、王子はまた、『ガキ』と言った。

