「何もわかっとらん。陽菜のぼけが。」
住宅街から少し離れたその場所は、人通りもなく、街灯も少ない。
遠くにある消えかけた街灯の灯りだけを頼りに王子の表情を読み取ろうとした。
「お前じゃ・・・」
顔を上げた王子が、私の頬に触れた。
王子の手はとてもひんやりとしていて、気持ち良かった。
王子の右手が私の左頬に、王子の左手が、私のあごに。
キ、キス???
キスの予感がして、目を閉じた瞬間、王子のおでこが私のおでこに触れた。
そして、ゆっくりと目を開けると、目の前に王子の顔。
目と目が合った。
「俺が好きな女は、お前じゃ・・・」
夢じゃないよね。
王子が「好き」だと言ってくれた。

