王子は、私の返事を聞かずに、ははは・・・と笑った。
キスしてって言いたかった。
して欲しかった。
そこに愛がなくても、喫煙女と同じ位置にいたかった。
今は、喫煙女が一歩リードしているような気がした。
「まぁ、ガキだからな。すぐ人の噂を信じるのは仕方ない。キスできるもんなら、陽菜にしてる。俺、そんなに信用ないか・・・」
彼氏と彼女のような会話。
だけど、私は彼女じゃない。
「陽菜こそ、男と一緒に帰ってた・・・」
王子はちょっとすねた顔をして、私の手をぶんぶんと振り回す。
だだっ子みたいな顔をした王子がとてもかわいく思えた。
「あれは・・・さっきの優雅って子で・・・たまたま一緒に帰ってただけで。」
「じゃあ、どうして追いかけてこなかった?好きなら、俺を追えよ。俺、待ってたのに。陽菜が追いかけてくると思ってたのに・・・俺のこと嫌いになったと思った。」
王子は、嫌いになれって言うくせに、こんなことを言う。
罪な人。

