「晴斗さんは、何がしたいですか?」




急に真面目な顔になった王子は、ふ~っとため息をついた。




「ガキが、何言うとんじゃ・・・ケーキでも食う?まだお前を食うのは無理だしな・・・」



赤くなってその場でモジモジする私の頭を叩いた王子は、ホテルの隣にある細い道へ向かう。



食べて欲しいって・・・

思ったんだよ、王子。




「ガキと言えばケーキ!ははは!陽菜、嬉しそうな顔してんなぁさすがガキ!!」



ロールケーキを目の前にして、目を輝かせた私を、肘をついた王子が見つめていた。



「ガキガキって言わないでください!!ガキじゃないもん。晴斗さんのいじわる。」



「くくく・・・そういう所がガキなんじゃ。まぁ、ええわ。お前はそのままでおれや。」



ブラックコーヒーを飲む王子は、コーヒーカップの横に添えてあるスプーンで私のケーキをちょこっと食べた。




「俺、ロールケーキが一番好き。」



王子に似合わないロールケーキ。


絶対に忘れない。




王子がロールケーキが好きだってこと。


きっとね、おばあちゃんになっても覚えてるよ。



それくらい、私は王子に恋してる。