「いらっしゃいませ!」
ドアの向こうにいたのは、王子ではなく、私のライバル・・・喫煙女だった。
昨日王子が着ていた服の女バージョン。
スカートの丈が短いことと、派手なメイクが嫌だった。
山田のお姉ちゃんだと思えば、少し親しみが湧くが、やっぱり今はライバルとしか思えない。
私を見た喫煙女は、不審者を見るような顔をしていた。
「どうされました?」
「いえ!!間違えました!」
ドアから飛び出した私の背後から、声が聞こえた。
「何しに来とんじゃ!」
振り向こうと思ったけど、喫煙女が見ていると思って無視して外へ出た。
「陽菜、わざわざチャリ返しに来たの?いつでもいいって言ったのに。変なやつ!」
王子は、私をドキドキさせるボーイ姿で爽やかに笑った。
「会いたかったから。ごめんなさい。」
私はうつむいたまま、自転車の鍵を王子に手渡した。
「このまま、帰る?それとも、俺を待ってる?」

