「姉ちゃんから聞いたけど、あいつはやめとけ!」



山田はそう言いながら、私と亜沙子の食べていたお菓子に手を伸ばす。




山田・・・彼女に振られて辛いはずなのに、全くそんな素振りも見せない。



「ほっといてよ!」



今は、山田からの情報は、欲しくなかった。


せっかくの嬉しい気分が台無しになってしまいそうだった。



自分でも内心気付いていた。



王子には、何か秘密があるかも知れないって。



でも、そんなことどうでもいいって思えるくらいに大好きで、幸せだった。




「あいつ、忘れられない女がいるらしいぞ。」




聞きたくないのに、山田はいらない情報を提供してきた。



私は、鼻歌を歌って、誤魔化そうとしたけど、そんなことは無理だった。



目の奥に熱いものが込み上げてきた。