ぎゅっと目を瞑った私の周りで、先輩の匂いがかすめる。
ふわりとおでこに触れたその感触は一瞬で、気付いたら私と先輩との距離は隣同士の、勉強を始めたときと同じくらい開いていた。
「……帰るよ」
「………っ、はい」
慌てて鞄に詰め込んで席を立つ。
先輩の背中を追いかけると「あ」と何かを思い出したかのように先輩が立ち止まった。
「これから覚悟しといてね」
そう言って差し伸べられる手。
「……よろしくお願いします」
照れながらもその手に私の手を重ねると、私たちは無人の図書館へと背中を向けた。
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