「……それ、ちょうだい」

指さしたのは私の持っている黒いお弁当箱。


でも、これをあげると私のご飯が……

買うにしてももう売店はほとんど売り切れだろうし、我慢するしかないだろうなと軽く落ち込む。


そしてお弁当箱を差し出した私の手には、代わりに先輩がさっきまで広げていたお弁当が乗っていた。


「え……?」

「交換」

そう言って私の作ったお弁当を食べ始める織部先輩。

その横顔に胸がきゅんと高鳴る。




先輩の優しさに気付いてしまったこの日は、先輩への思いを増幅させ、私をさらに我が儘にさせてしまうきっかけになった日でもあった。