「ただいまー」



誰もいないのは承知で、いつものように家の中へと声をかける。



「おかえり」


えっ!?


返ってきた声に驚いて立ち止まれば、リビングの方から功希が顔を覗かせた。


「………どこ、行ってたの?」

「えっ…………と、ちょっと買い物に」


どくんどくんと鼓動が速まる。



「一人で?」

「も、もちろん!」

「荷物は?」

「何も買わずに帰ってきちゃった」


「ふーん」と言って顔を反らした功希に、難を逃れたとほっとする。


なんで今日こんなに帰ってくるの早いんだろう。


焦りながらもいつもと同じような興味なさげな返事に安心していた私は、訝しげにこちらを見ている功希に気づかなかった。