「俺、高校のとき熊沢莉乃っていう1個下の女子が好きだったんだよね」
「えっ、莉乃を!?」
「通りでどっかで聞いたことあると思った。………それにしても、莉乃っていう名前珍しいと思ったんだけどな」
何を言ってるのかと考えていれば、高校の時の莉乃の話をしだした先輩に、織部さんの奥さんを同じ名前の別の莉乃だと思いこんでいることが分かった。
「………なんか、思い出したら会いたくなってきたっ!!」
「連絡先知ってるか!?」だなんて問いつめられて、誤魔化す。
「やっぱりそうだよな…」と落ち込んだ先輩に、心の中で謝った。
…………知らないままの方が良いってこともあると思う。うん。



