耐えられなかった。堪えたら、ますます大波みたいに押し寄せてきそうで俺はお礼を言う余裕なんてなくて、そのままドアを閉めて、走る、走る、走る、走る。
誰もいない場所に行きたかった。
何も聞こえない場所に。
まっさらになった頭で、走って走って走り続けて───気づいたら、誰もいない薄暗い廊下が続いていて。
俺は、ぎゅうっと握りしめていたはずの手の力が抜けていく。
そのまま冷たい壁にずるずると体が引きずられていくみたいに、力が抜けて、寄りかからずには立っていられなくなって。
「……ぁ、……あ……う、」
声にならない声で、うめき声が漏れる。
目をつむって、まぶたの裏に浮かんでくるのはほろほろと涙をこぼしながらなくシキの顔。



