一言でいうなら、嘘くさい。
きっとどこかの面白がった奴らが広めて、それを面白がった奴らも広めていく。そういう風に話が二転三転して出来上がったんだと思う。
「だーかーら、絶対あるって」
「はいはい」
「男はロマンスだぜ、スイくん」
「ロマンスだけで生きてけるなら世の中困ってないと思うけど、凪くん」
そんな話をしているうちに、1年5組の教室の前までやってきた。
ドアを開ける。───ゲ。
目の前で仁王立ちをしている奴が、約一名。
見覚えのある、というには遥かに見すぎてしまった顔。
きりっとした気の強そうな眉に、吊り上った瞳、にっこり笑えば少しはかわいく見えるのかもしれない彼女の口元は、いつもながら俺と張り合うほど仏頂面だ。
遠目でそしてかなり薄めで見れば、まあ整ったほうだろう、とお世辞にお世辞を重ねていってみる。
「───スイ」
「……なんだよ、夕雨」



