耳鳴りがした。 きいいいんと耳障りな音が耳の奥でずっと鳴り響いている。 笑うシキの顔。 怒ったシキの顔。 照れたシキの顔。 全部が、ぱらぱらと音を立てて崩れて行って、最後に思い浮かんだのはシキの泣きそうな寸前みたいな、我慢してるって分かりきっているくらい堪えて、それでも儚く笑う顔だった。 さっきまでシキがいたはずの、その場所に。 「───え」 ───人影すら、なかった。