俺はゆっくり立ち上がって、教室のドアを開ける。
廊下は人通りも多いせいか、熱気があったけれど教室は冷房も効いていて、肌を這うような冷たい空気が体中にまとわりついてくる。
朝はなっていなかったけれど、机といすが全部後ろに積み上げられていて、自分の机がどれか分からない。
手当たり次第に机の隙間に顔を突っ込んで、自分の鞄を探す。あ、あった。
机が積み上げられた隙間に、無造作に置かれた俺の鞄に手を伸ばして、中からタオルを取り出した。
振り返ると、シキは文化祭のメッセージや、伝言がぎゅうぎゅう詰めに書かれた後ろの黒板をじいっと見て、何か懐かしそうに目を細めていた。
『実行委員は3時に教官室へ。夕雨』
『段ボール買ってきます。お金の徴収は後で。加賀』
『先に体育館で演習中!サボるなよハゲ。みか』
『みんなで力合わせて優勝!先生に焼肉おごってもらう!!山崎』
『頑張れよ。おごるのは給料前まで待ってくれ。担任より』
そっと文字をなぞるように、細い指を這わせてシキは小さく笑う。



