……もともと、劇的なんて期待しているわけじゃないけど。
平凡、並み、同じ。
そういうカテゴリーの中で生きていたい。そうすれば、無駄に傷つくことも、泣くこともない。疲れなくて済む。
いつからだっけ、こんな風に他人事のように日々を過ごすようになったのは。……思い出せない。
「つーかそれさ、本当に幽霊なんじゃね?」
いつもの言葉。
俺が身を逸らすほど、前のめりになって焼けた茶色い肌の毛穴が見えるほどに顔を近づけた凪が、興奮気味にそういう。
俺は手に持った白い手紙を鞄の中に入れる。
どうしてだか、俺は何も書かれていないはずの手紙を捨てることが、できなかった。今まで何通も送られてきた手紙も机の中に放り込んであるのだ。
多分、一つ捨てないままでいるとたくさんたまっていく手紙を見るたびにこんなに集めたんだから、と後ろめたくなってしまうんだと思う。
「ばーか、いるわけねえよそんなの」
ちく。
……あれ?
なんだろう、今の痛み。かすかに、本当に指先で触れたような痛み。